- 1 CBDCの概要
- 2 CBDCの特徴
- 3 CBDCのメリット
- 4 CBDCのデメリット
CBDCの概要
CBDCとは?
中央銀行が発行するデジタル通貨です。
「Central Bank Digital Currency」の頭文字でCBDCと呼ばれております。
中央銀行が発行している既存の法定通貨は紙幣ですが、それをデジタル化した通貨になります。
日本銀行ではCBDCとして以下項目が定義されています。
・デジタル化されていること
・円などの法定通貨建てであること
・中央銀行の債務として発行されていること
CBDCの歴史
新しいデジタル通貨としてビットコインが誕生して、ブロックチェーンの技術を活用する可能性やデジタル化について2015年ごろから各国議論や調査を行っておりましたが、キャッシュレス化の急速な普及や2019年6月にSNSソーシャルメディアのFacebook(現:Meta)がステーブルコイン「リブラ」の開発発表したことにより各国危機感を感じ、各国の中央銀行がCBDCの実用化に向けて拍車がかかりました。
キャッシュレスの決済比率が高い国ほどCBDCの実用化の検討にも前向きな傾向があります。
国内は他国と比較してキャッシュレスの決済比率はまだまだ低い状況ですが、2020年10月に日本銀行が7国の先進国中央銀行(カナダ銀行・イングランド銀行・欧州中央銀行・リスクバンク(スウェーデン国立銀行)・スイス国民銀行・米国連邦準備制度理事会とBIS(国際決済銀行)とCBDCの基本原則(①通貨・金融の安定を損なわない②公的・民間マネーとの共存・補完③イノベーションと効率性の促進)を取り決め発表しました。
特に世界各国の中でCBDCの実用化に向けて積極的に取り組んでいるのが中国とスウェーデンになります。
中国やスウェーデンは早い段階から研究を行っており、中国は2022年開催の北京オリンピックでの発行を目標に、2020年4月と10月に中国人民銀行が一部の都市限定にCBDCの「デジタル人民元(e-CNY)」を配布など実証実験やデジタル化に向けた法整備を行っております。
スウェーデンでも同年2月にリスクバンクがCBDCの「e-krona(イークローナー)」を発行して実証実験をしております。
また同年10月にカリブ海にある島国のバハマのバハマ中央銀行がCBDCの「Sand Dollar(サンドダラー)」、同じく10月にカンボジアのカンボジア中央銀行がCBDCの「Bakong(バコン)」を正式に発行して運用をスタートしました。
バハマの方が少し早く発行しているので、バハマが世界初CBDCを発行した国になりました。
CBDCの現状
世界の8割以上の中央銀行がCBDCの実用化に向けて検討しており、実際にCBDCを正式通貨として導入している国もございます。
2021年3月に東カリブ地域の8ヶ国の島国で東カリブ中央銀行がCBDCの「DCash(ディーキャッシュ)」、10月にナイジュリアのナイジュリア中央銀行がCBDCの「eNaira(イーナイラ)」を正式に発行しており徐々に実用化している国が増えております。
CBDCの種類としては、直接発行型・間接発行型と口座型・トークン型と大きく4つに分類されており、これらの組み合わせを軸に発行を検討されております。
直接発行型は銀行が仲介しない形になりますので、現在発行されているCBDCは間接発行型になります。
また現状CBDCを導入した国の特徴としては、先進国ではなく新興国になります。
先進国と比較して新興国は経済が安定しておらず、貧困の差など既存の金融サービスを満足に受けられない方がおりCBDCの導入の必要性がより高いことがあると思います。
国内では現状CBDCの導入予定は未定ですが、2021年4月より日本銀行がCBDCの実証実験を開始しており、今後の世界状況やデジタル通貨への変化に対応できるよう実験を進めているようです。
同年10月にはG7(日本・アメリカ・イギリス・カナダ・フランス・ドイツ・イタリア)は国際会議を開きCBDCの共通原則を発表しました。
現在G7など先進国でCBDCを正式発行している国はないですが、一番動向が注目されているのが中国になります。
2022年の北京オリンピックでは外国人向けにデジタル人民元(e-CNY)が提供されました。
その後正式導入はまだ行われておりませんが、中国が正式発行して他国でも使われるようになれば中国の地位向上や世界の基軸通貨に変化が起こります。
現在世界的に基軸通貨としては米ドルになりますが、米ドルはデジタル化されておりませんので、中国が先進国よりCBDCの分野にリードしている状況にアメリカ含め世界各国がCBDCの検討や実証実験を本格的にやり始めたと思います。
アメリカはCBDC分野においては慎重で出遅れておりますが、中国のリード状況もございますので、CBDCのデジタルドル発行に対して以前より前向きな検討をしております。
今後中国や先進国がCBDCを発行することで世界的に法定通貨のデジタル化が進められると思います。
CBDCの特徴
CBDCの種類①
ホールセール型
金融機関が利用するためのCBDC
リテール型
法人・個人が利用するためのCBDC
CBDCの種類②
発行方法が「直接発行型」・「間接発行型」、決済方法が「口座型」・「トークン型」を組み合わせた4パターンで検討されております。
直接発行型/口座型orトークン型
ユーザーは中央銀行に口座を発行して、中央銀行が法人・個人に直接CBDCを発行する。
中央銀行が一括管理を行いますので、民間銀行が不要になり従来のシステムとは異なる形になります。
間接発行型/口座型orトークン型
中央銀行が民間銀行を経由して間接的に法人・個人にCBDCを発行する。
紙幣がデジタル化されるだけで、既存のシステムと特に変わりはないです。
CBDCを発行した国
バハマ
CBDC:Sand Dollar(サンドダラー)
カンボジア
CBDC:Bakong(バコン)
東カリブ
CBDC:DCash(ディーキャッシュ)
ナイジュリア
CBDC:eNaira(イーナイラ)
各国のCBDCの進捗状況
中国
CBDC:デジタル人民元(e-CNY)/実証実験中
スウェーデン
CBDC:e-krona(イークローナー)/実証実験中
アメリカ
CBDC:デジタルドル/検討中
EU
CBDC:デジタルユーロ/検討中
韓国
CBDC:デジタルウォン/実証実験中
CBDCのメリット
通貨の発行や管理のコスト削減ができる
法定通貨の硬貨や紙幣の発行にはコストが発生しております。
また店舗のレジやATMの設置や管理など硬貨・紙幣にすることで様々なコストが発生しておりますが、CBDCを発行することでこれらのコストを削減することできます。
決済システムの効率化ができる
法定通貨の入金や出金など作業工数がかかっていることが全てデジタル上で完結できますので、作業工数の効率化ができます。
また送金スピードや利便性の向上など決済システムの効率化にも期待できます。
既存の金融サービスを使えない方も利用できる
新興国など自国の経済状況や審査関連で口座を保有できずサービスを利用できない方がいますが、CBDCであれば利便性が上がりインターネットを使える環境であれば既存のサービスを利用できない方も利用できます。
CBDCのデメリット
取引の匿名性がなくなる
匿名性をなくすことでマネーロンダリングや犯罪防止の抑止力になるメリットもありますが、法定通貨をデジタル化することで、全ての取引を中央銀行に把握されるためプライバシー観点でデメリットもあります。
災害時やサイバー攻撃のリスクが高まる
全てデジタル上で取引が行われるため災害時やネット不具合などネットに繋がらない環境になった際に利用ができなくなります。
またデジタル化されているためサイバー攻撃の対象機会が増えるためセキュリティ面の強化や対策は必要です。
ITリテラシーが低い方は対応準備が必要になる
既存の金融サービスを既にデジタル上で活用している方は抵抗がないですが、現金やキャッシュレス未対応の店舗などITリテラシーが低い高齢者や企業などは、活用までのハードルが高く一定の準備期間が必要になります。
こちらのサイトでは暗号資産(仮想通貨)に関連することを紹介しています。
今回はCBDCについてご説明します。
CBDCについて簡潔に説明しておりますので、サクッと内容を理解したい方にオススメです。